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はじめて コンタクトの実現したい野望

宮殿での憂欝な日々が続き、さらに父親のすすめて、今度は西の門をくぐって宮殿の外に出ると、そこで死者に出会います。

同じように、あれは何者かと聞き、死者であることを知ります。 そして、今は生命のおごりをもっているが、やがてはあのような姿になることを教えられました。
お釈迦さまは、憂惨な思いで宮殿に帰りました。 お釈迦さまは、宮殿の外で「老」寸病」「死」という現実に直面したわけです。
お釈迦さまは、また宮殿のなかで思索にふけります。 そして、そのあと北の門から宮殿の外に出て、出家したお坊さんに出会います。
そのとき、お釈迦さまは、お坊さんのすがすがしい姿に心を打たれて、自分も出家を志したと言われています。 これは、お釈迦さまの出家物語ですが、「老」「病」「死」ということが、お釈迦さまが出家する根幹にあり、しかも、「老」「病」「死」がワンセットになって突きつけられたということです。
私たちは、この「老」「病」「死」ということを、分けて考えています。 病気になると、それは老いではなく、たんなる病気なのだと認識してしまいます。
病は、外傷や細菌、ウイルス性のものと、生活習慣病からくるものがありますが、生活習慣からくる病は、ある意味では、老いることとパラレルになっています。 つまり、エントロピーの法則のように、こうした流れは不可逆ですから、病気が治る、あるいは、病気を治すという言い方ができないのです。
今の医学は、病気を老化や死とは切り離していますから、治療によって元の状態に戻す、あるいは、逆戻りできると考えているようです。 医学がこうした自然の摂理に逆らっているから、おかしくなったのではないでしょうか。

仏教からみれば、たしかにガンが消える、あるいは病気が治るという現実がありますが、少し次元が違う問題かもしれません。 それよりも、病気は治らないものだという認識に立った医学のあり方もあるはずです。
思うがままにならないことは受け入れる仏教では、この「生」「老」「病」「死」をなぜ苦しみだというのでしょうか。 私は辞書を引いて、サンスクリット語やパーリ語の原語にあたってみました。
「苦」というのは、本来、「思いのままにならない」ということだったのです。 よく考えてみると、生まれること、老いること、病気になること、死ぬことは、人間の思うままにはなりません。
生まれたくない、老いたくない、病気になりたくない、死にたくないと思っても、そんなことはできません。 そうすると、「苦」というのは、「思いのままにならないことを思いのままにしようとする」ことから引き起こされるということになります。
つまり、思うようにはならないのですから、思うようにしようとすれば、それが交感神経の過剰な緊張状態を引き起こし、ストレスになるということです。 病気でいえば、早く治そう、たくさん薬を飲もう、手術をしようとするから苦しんで、悪循環に陥ってしまいます。
そんなことは考えないようにすれば、苦しみから脱却できるということです。 私はよく「苦(九)にするな、八にしなさい」と言います。
世の中の事象は、「思うがままに」はなりません。 風邪を引いても、すぐには治らないのですから、風邪にかかったことを素直に受け入れ、多少の熱があっても、薬など飲んで早く治そうとしないで、ゆっくりと、病気といっしょに暮らそうと考えたほうがいいのです。
もちろん、思いのままになることもあります。 私はインドにもう三O回ほど行っています。

最初のころ、日本人のグループを連れてガンジス河を遊覧していたころ、川岸で火葬をしているところに出会いました。 同行者たちが、「ぜひ写真に収めたい」と言いますから、インド人のガイドにお願いしたのですが、なかなか承諾してくれませんでした。
ようやく「撮影していることが家族に知られないように」という条件つきで許可をしていただきましたが、後で聞いたところ、インド人にとっては、死後に何もないということがとても大事だということでした。 写真を撮ると、天界に昇っていけないというわけです。
仏教でも、この世に執着を残さず、きれいきっぱりと冥土の旅に出かけることを大事だと思っています。 身体は滅びゆくものであり、その流れに任せると考えているからです。
日本人も昔は、ある時期になると隠居や隠退をし、安らかに老いや死を迎えていたように思いますが、今は「生涯現役」を目ざして、いつまでも若く元気にと、老いや死を遠ざける傾向が強くなっています。 なぜなのでしょうか。
それは、お釈迦さまが悟ったように、人間が散慢になっているからです。 際限のない欲の虜になり、餓鬼同然になっているからでしょう。
ある意味では、何をやっても満足できませんから、いつも欲求不満に陥っているということです。 でも、人間が死ぬ確率は一OO%です。
この真理はだれも否定できません。 いくら不老長寿の薬が開発されても、一OOO年、二OOO年も生きることはないでしょう。
老いや死は、仏教でいう「四苦」のひとつです。 しかし、そもそも「苦」とはどういうことでしょうか。
それは「思うがままにならない」ということです。 老いや死は思うがままにはなりません。
仏教では「老」「病」「死」を切り離して考えませんから、「病」も「思うがままにならない」ものです。 お釈迦さまが言う「苦にするな」とは「思うようにならないことを思うようにするな」ということです。
つまり、「病気になったら、病気のままでいなさい」ということなのです。 もちろん、そこには人間に対する深い洞察があります。

死すべき人間を自然がその恵みで生かしてくれているのだから、その自然の恵みに身を任せるしかないということです。 病気を治すという考え方ではなく、自然に死んでいくための医学という観点も必要ではないでしょうか。
哲学的にいうと、それは宇宙に還ることです。 それまでは異物が体内に入ると排除して自分を主張していましたが、死を迎えるころになると、そのなかにいろいろな異物を取り込んで大きな宇宙と一体になるのです。
病気を「苦」にしてはいけない病気というものを考えるうえで、仏教の生死観がとても参考になります。 比轍的にいうと、人間の一生というのは氷と水の関係のようなものなのです。
氷が融けて水になるといっても、氷が一瞬にして水になるわけではありません。 最初は、氷が一OO%、水がO%の状態から、氷が八O%、水が二O%、そして氷が五O%、水が五O%、さらに氷が一O%で水が九O%になり、そして最後に水が一OO%になります。
それは、人間の生死観と同じです。 最初は生が一OO%で、それが生が八O%で死が二O%になり、生が四O%で死が六O%そして最後に生がO%で死が一OO%となります。

つまり、「死」は最初から「生」のうちにあることになります。 その意味で、「死」は病原菌のようなものです。
私たち人間は「死」という病原菌のキャリアといっていいでしょう。 すでに誕生する前から病原菌を保有し、潜伏期間の聞を生きているということになります。
先ほども述べましたが、仏教では「生」「老」「病」「死」を「苦」として捉え、人間の一生を氷が水になるように連続したものと考え、「死」は「生」のうちにありますから、「老」「病」もまた共に在るということになります。

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